[H21乙934号事案](1/6)
[Side 桜井 恭司]
「……というわけなんだ。戸田は死ぬ少し前、俺に電話をかけてきた。その携帯小説の中に、実在の事件をなぞらえた箇所がある、その確認をするために。」
「うん、まぁそれはわかるんだけど、なんでアタシに話を聞こうと思った?」
隣のクラスの初瀬向日葵(はつせ ひまわり)は携帯に表示された『見てはいけないあとがき』を目で追いながら、俺に尋ねた。
この女とは小学校から一緒で、知人ではあるけど、特別仲がいいわけでもない。
戸田とその妹の合同葬儀の帰り道、突然の接触に訝(いぶか)しがられるのも当然だった。
「この小説の続きが知りたい。仮にこれが実話だとすると、星宮零はこの後生徒会執行部を頼ったことになる。だったら、執行部にいた奴に話を聞くのは当然だろ?」
初瀬は去年、前期の生徒会長を務めている。
2年前、この一連の事件が起きた当時も執行部にいたはずだ。
「なるほど。…この小説、ここで終わりってことでいいのか?」
そう言うと、初瀬は携帯を俺に見せてきた。
画面は74ページ。
九条が星宮にノートを託した例の場面が表示されている。
「ああ。『次へ』は押すなよ?」
初瀬の視線はちょっと蔑むような感じだった。
俺の周りの女子はオカルト好きな奴も多いけど、どうもコイツは科学信仰の方が強いタイプみたいだ。
「協力はしよう。ただ、ここじゃ資料も見れないから、とりあえずアタシん家に来いよ」
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