アルバイト
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−11月10日− (1/10)
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11月10日は、俺、谷翔太の誕生日。
去年なら、俺は柚希と一緒に過ごしていた。
バカみたいにはしゃいで、でもバカみたいに楽しくて、幸せな一時。
恥ずかしくてアイツには言えないけど、もう1週間前から浮き足立ってたりしたんだ。
それが、今年は。
暗い部屋に1ヶ月近く閉じ込もって、ずっとベッドに腰掛けたまま。
毎日毎日、飽きもせずにルッシュやスカール、果てはソイまでやって来るけど、俺は曖昧に反応を返すばかりだった。
今日だって、変わらず俺は、いつもと180°正反対の誕生日を終えようとしている。
――今年は。いつもと。コレ、言い換えた方がいいのかな。
『“今回”の今年“も”』『“いつも”と同じように』に。
そう、俺が引き込もっている理由はまさにコレ。
ちょうど1ヶ月前、中途半端に“俺”の話をされて(正しくは、してもらって)、 俺はかなり混乱した。
考え過ぎて、ゲシュタルト崩壊したり。
輪廻追放やら、永久輪廻やら。
1万歩譲って咎人は良いとして。
俺は仰向けに転がると、脱ぎっぱなしで放置してあるスーツを手で探った。
求めるものは、一つ。“俺”の手紙。
開げて天井に透かすと、個々の文字が今にも動きそうに光った。
目に止まる単語はいつも、『順調』『最期』『運命』、そして『廊下』。
これらの意味を深く考えることが、1日の終わりの日課になっていた。
最も、終わりと言ってもアルバイトがあるからまばらで、日によっては昼間だったり。
今は22時。この1ヶ月で一番、“終わり”が似合う時間だと思う。
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