オキュパイド・アース
◆15[それでも前に進まなきゃ](1/9)




3月も終わりに近付く頃。

国民投票で、コロニー内の気温や風景設定に「四季」を導入した日本では、
春真っ盛りとなっている。



ここ、日本国コロニーNo.3【中京】でも、
コロニー内の気温は、冬終わりから徐々に上昇を始め、
今では20度を越える暖かさとなっている。

天井のスカイモニターは、春霞に染まった優しい青空が映え、
壁面のモニターには、鮮やかな満開の桜が、風に揺られている。





市立四日市東高等学校

今は春休み。

4月に新たな一年生を迎えるまでは、一部生徒の為に解放されているだけで、
今は静かに新学期の始まりを待っている。



「一部生徒」



それは、統合宇宙軍の奨学生コースを専攻している生徒の事。

一年の間に、度々訓練航海に出る彼等の為に、
遅れがちな通常科目を補填する為の、
補習授業が行われていたのであった。




キーンコーン
カーンコーン…



ある日の夕方

全ての授業が終わり、統合宇宙軍奨学生の生徒達が「わらわら」と家路に急ぐ中、
その生徒達の集団の中に、カオルの友人…ショーン達「いつものメンバー」がいた。





ミカ「伊達会長…元気にやってるかな?」



ショーン「元気も何も、まだ4月にもなってないし(笑)」



エレノア「庸子は相変わらず元気よ。
引っ越しの準備も終わって、やる事ないからって、
毎晩私の部屋に来て、勉強の邪魔してる」



恭香「た…楽しそう」



エレノア「庸子は楽しいかも知れないけど、私は良い迷惑」





そう突っぱねているエレノアではあるが、
表情からして、心底嫌がっていない事がうかがえる。

エレノアはエレノアで、庸子といられる残り少ない時間を、
楽しんでいたのだ。





カスミ「早く…新学期にならないかしら」



ため息混じりにつぶやくカスミ。



ヒロノブ「姉さんは、口を開けばそればっかり」



カスミ「だって…」



ショーン「後もうちょっとの我慢だよ(笑)」



エレノア「うん」



ミカ「そうね、後ちょっと我慢すれば」



恭香「…うん♪」





後ちょっと我慢すれば

新学期になれば

「彼が帰って来る」



彼らの心の冬も、
いよいよ…雪解けが迫っていた。





続く

- 217 -

前n[*][#]次n
/242 n

⇒しおり挿入


⇒作品?レビュー
⇒モバスペ?Book?

[編集]

[←戻る]