オキュパイド・アース
◆8[黙示録の4騎士達](1/16)




10月

国民投票で採決され、圧倒的な得票数を持って決定した【四季】。

地球軌道上にある日本国は今、気温を8℃〜18℃に設定し、
公共施設やポート、壁面の壁紙、そしてスカイモニター。
それらの全てが過去の地球の景色…「紅葉」で飾られ、
過ぎ去った暑い夏と、これから来る白い息吐く冬の狭間で、
夜も昼も快適で、哀愁漂う空間を、人々にもたらしていた。





日本国コロニー3【中京】

場所は、国連軌道宇宙軍日本国事務局。

こじんまりとしたオフィスの一角、薄暗い部屋の中に、情報保全部のメリル特務少佐がいた。



メリル特務少佐は直立不動。

そして、机を挟んで椅子に座るのは、彼女の上官である、グレン・ヨーバス中佐。
メリル特務少佐の様な民間徴用の軍属とは違い、国連軌道宇宙軍の軍服を来た、職業軍人である。



丸眼鏡の奥からメリル少佐を見上げる冷たい瞳。
さすが、情報保全部…スパイ部門と言うべきなのか、
表情や視線からは、その内面で何を考えているのか、何を感じているのか、全く判断出来ないほどに、
グレン中佐は完璧な冷徹なオーラを発しながら、メリル少佐の報告を聞いていた。





メリル少佐「【プロジェクト・ゴーホーム(帰宅作戦)】の付帯作戦である、
プロジェクト・ノスタルジア(郷愁作戦)。
先週末に始まった、映画の上映で、
全てのメディア媒体への展開が終了しました」



グレン中佐「ご苦労だった、一般の反応はどうかね?」



メリル少佐「上々です。
昨年末よりの、空前の地球ブームは衰える事を知りません。
ブームに便乗するメディア媒体も増えているので、作戦は軌道に乗ったと判断しても良いでしょう」



グレン中佐「そうか、さすがは情報戦略のプロ。
君に任せて正解だったな」



メリル少佐「ありがとうございます」



グレン中佐「いくつものプロジェクトを抱えさせて、申し訳ないとは思うのだが、いかんせん人材不足。
デイリー中京の記者を使ったプロジェクト・リーク(漏洩作戦)と、
シビュラの皇女の監視は続行、君に一任する」



メリル少佐「承知しました」



メリル少佐は敬礼し、グレン中佐の部屋から退出しようとする。

その時



グレン中佐「少佐、待ちたまえ」



グレン中佐が呼び止めたのだ。





続く

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