オキュパイド・アース
◆3[オービット・ラプソディ](1/27)
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ラグランジュ・ポイントは既に飽和状態。
地球を追われた人類はやむなく、地球周回軌道や月面・月地下、
月面周回軌道…
はたまた、火星にまで、その生存の権利を主張していた。
そんな時代の話。
宇宙空間、主に木星より内側の「内惑星エリア」が人類の繁栄に満たされながらも、
ただ一つ…太陽系第三惑星【地球】だけが、人類の足跡が絶えてから、
2世紀ほど経過してしまった。
そんないびつで異様な時代の話である。
2415年の春。
一年を通じて温度変化を放棄した国家・コロニーが無数にある中で、
国民投票で【四季】の気候変化を望んだ、ラグランジュ・ポイントより
地球内軌道に6つのコロニーを有する国連常任理事国の一つ、大国【日本】。
その日本の屋台骨と言うべき、工業の中心地が、
コロニー3【中京】である。
住環境に配慮し、人間の生存に必要な「環境整備」に特化した、
中心が空洞の円筒形「シリンダー型」コロニーとは違い、
ひたすら実務的な作業空間を保証した、ドーナツ型コロニーを【徹底的に】つなぎ合わせた、
重工業を主体とした、生産性宇宙随一のコロニー。
それが、日本国コロニー3【中京】である。
その、コロニー3のくっついた無数のドーナツの一つ、
円形124階層の下から三番目。
企業所有の「福利厚生エリア」…つまり、従業員の居住階。
その一角、壁面のプレートに「デイリー中京」と、刻印されたエリアがある。
そのエリアの一室、扉に張ってある、表札らしき紙一枚。
そこには、「どのうえ」と、わざわざひらがなでメモ用紙に名前を殴り書きし、
適当にちぎって貼り付けた様な、
家主がどれほど適当な性格なのか、即座に判断出来る程に、適当過ぎる表札だった。
その「どのうえ」宅
薄明かりの続く、長い真っすぐな通路が、
遠くへ行くほど…視界の奥に行くほど、どんどんと弧を描き、上昇して行く。
その通路の両側を挟む様にズラリと並んだ扉、
その中の一つである「どのうえ」の表札の奥から、
突如大音量で流行歌が流れ始めた。
時刻はコロニー3時間で、早朝の4:30。
近所迷惑な時間帯である。
続く
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