オキュパイド・アース
◆2[ムナカタ・カオル](1/21)




僕の家は、貧乏だ。

ただ、貧乏と言っても、明日食べる物に困るって言う程でも無い。

でも、本屋でマンガや雑誌を好きなだけ購入出来る訳でも無い。


学校から帰る途中、クラスの友達が、「みんなでクレープ食べに行こう」って誘いに来た時、
「僕お金持って無いから次の機会にね」と、断る程度の貧乏だ。

友達が「もう飽きたからいらない」って言った
文房具を、
「いらないならちょうだい」って気軽に言えてしまう程度。


そう。

学校の昼休み、みんなが学校の食堂で豪華なランチを楽しむ時、一人で教室に残って、
母さんが持たせてくれた、チーズとハムをパンで挟んだお弁当を食べる程度に、お金は持って無い。



別に、母さんのお弁当に不満を唱えてる訳じゃない。

母さんのお弁当は美味い。

母さんはお弁当を作る天才だ。

夕飯の残りが、母さんの手にかかれば、
ピッカピカで思わず笑顔がこぼれる、美味しいお弁当に早変わりする。



お弁当の話に傾き過ぎたけど、
とにかく僕が言いたいのは、
お父さんのいない母子家庭で…

世の中にはまだたくさんいるだろう、母子家庭の中で、
僕の母さんは最高だって事だ。

いくら貧しくて窓無し「スカイモニター」無しの下階層…箱暮らしでも、
僕は母さんを尊敬している、素晴らしい女性だ。


僕が生まれる前に、お父さんは死んだらしい。
母さんはあまり多くを語ってくれないけど、なんだかそうらしい。

どうやら、火星開発計画公社の運搬船の船員だったらしいけど、
お父さんが何故死んだのか、事故なのか病気なのかすらわからない。

まあ、母さんが話したくない事なんだろう。
そこら辺は僕も大人だ。母さんが話してくれるまで待とうと思う。

とにかく、仕事をしながら僕を育て、家事もしっかりこなして料理も美味い。
それにとっても美人で若い。

これ以上、母さんに望む事が無いくらい、母さんが大好きだ。



だから、こんな僕でも、
ちょっとでも母さんの負担を減らそうと、
高校に入学したと同時に、国連軌道宇宙軍主催の奨学コースを選択した。

そう、たまに綺麗なお姉さんが登場するCMでやってる


【ねえ…学校を卒業してからチンタラ仕事を見つけるの?それで良いの?
私は、学校を卒業したら即、航宙艦の乗組員で太陽系デビューする人が好き♪】


って、そんな説明臭い女の子いないだろって、苦笑するCMだ。





続く

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