マジック・ワールド
[接触するとき](1/18)
「お待ちしておりました。天宮様。」

今、私はある豪邸に来ている。

「どうぞ、お入りください。」


その先に待つのは、決別か和解か。

あるいはまた違う何か、か。


こちらです。」

執事の方が私を招く。


何が起きたのか、私は知らなければならない。

だから。


失礼します。」

私は1歩を踏み出した。



コツコツコツ……



足音だけが響く邸内。

より不気味に感じる。


坊ちゃんは、あの日以降誰とも会話をしておりませぬ。」

案内する執事さんは歩きながら話し出す。

「まるで呪縛にとらわれているかのように暗い部屋に引きこもっております。」

彼のご両親は?」

「やはり、ふさぎ込んでおられます。特に奥様は痩せ細ってしまわれました。」

そう、ですか。」

私の返事を聞いた執事さんは立ち止まって、私を見つめた。

「許してほしいとまでは言いません。坊ちゃんの行った行為は殺人ですから。
ただ今の状態から抜け出す糸口が見つかりません。我々一家では、坊ちゃんの闇と向き合うことができませんでした。

だから今のあなたとなら、坊ちゃんは話してくれると信じて託させてください。」


託す、か。

ここの一家は人任せが多かったのかもしれないな。


「私が踏み込めたとしても、真に向き合うことができるのはあなたがたです。

どうかそれだけはお忘れにならないでください。」


執事さんの表情が変わり、強くうなずく。

分かってもらえたと信じておこう。



ここです。」

執事さんがある扉の前で立ち止まった。

「誰も中に入ることができておりません。私の声も聞こえておられるか

分かりました。ここまで案内していただき、ありがとうございます。」


お礼をいい、執事さんがこの場から離れ去った後。

正面の扉を見据える。

ふう。」



ーコンコンッ。



「奥村ガルム。お前と話をつけに来た。」

















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