マジック・ワールド
[それぞれの思い](15/15)
日はすでに昇りきっていた。
お願い…間に合って…
ガラガラッと扉が開く音が竜舎に響く。
「…!」「リランちゃん…!」
「シド……?」
私はドラゴンの名を呼ぶ。でも…反応がない。
「シド!?」
近くに駆け寄り、何度も呼んだ。体の熱はまだ残ってる。
それなのに声すら返してくれない。
「お願い…口を開けて、シド。絶対に助けるって言ったでしょ?………だから!」
『リ…ラン…』
「!」「シド!」「お前…まだ意識が…」
『…俺は…信じ…て…る…よ。』
シドがわずかに口を開けたのを見逃さなかった。
私は薬をシドの口に流し込む。
…お願い、スズ草。
私たちと一緒にシドを…助けて。
その瞬間。
「こ、これは…!?」「なんだ!?」
「シドの体が…光ってる?」
シドの体全体が輝き出した。
スズ草の花と同じ黄金色に。
でも、変化はそれだけじゃない。病で免疫機能がかなり低下してたことで体の鱗(うろこ)もボロボロになっていた。
なのに今はかなりの速さで回復している。
そして…
『…リラン?』
彼は目を覚まし、立ち上がった。
ドラゴン病に…勝ったんだ!
「…シド!!!」
久しぶりに元気な姿を見ることができて、自然と涙が溢れてきた。
「良かった…シド…。」
『ありがとう、リラン。それにハヤトとジャックも心配かけたな。』
2人にはシドの声は分からない。でも、2人ともシドの思いを感じ取っていた。
「…大丈夫だ。お前が元気になってくれればそれでいい。」
「心配なんて…かけたのは俺たちの方だ、シド。今までごめんな。…もう1人にはしないから。」
みんなでシドに抱きついて泣いた。
…奇跡はこの日、確かに起こったのだった。
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