マジック・ワールド
[互いの過去](17/17)
「ねえ、シド。どうしてそんなに怖がってたの?」
『どうしてそう思ったんだ?』
シドは目をそらさない。私を…しっかり見ている。
「さっきの叫び声を聞いたから。ひどく絶望しているように感じた。」
『…。』
突然、シドが黙ってしまった。私は慌てて声をかける。
「言いたくなかったらそれでいいよ。あなたが無理してまで聞きたいとは思ってないから。」
『…すまない。』
シドはなぜか謝ってきた。
「…どうして謝るの?」
『俺は…リラン、お前を信じていいか分からないんだ。信じた相手が…俺の前から消えてしまうんじゃないかって思うと…こ、怖くて…』
これが…シドが抱えているもの。
きっと今の私には聞いていい権利はない。だってまだ会ったばかりだもの。
私は傷だらけのシドの体に抱きついた。
『!』
「シド。まだ私のこと信じなくていい。過去に何があったかは私に知らせる必要もない。でも、1つだけ言わせて。
…私は、あなたを1人にしないから。」
『どうして…そこまで?俺の世話係になったからか?』
「…それだけじゃない。私がそうしたいから。私の意思で決めたことだから。
ねえ、シド。…私にもね、苦しかった過去があるよ。でも、向き合うって決めることができた。弱気になることもあるけど立ち向かってる。…シドもそうでしょ?」
『!』
「シドの目を見て思ったんだ。まだ諦めてないって。まだ戦う意思が残ってるって。」
『リラン…』
シドは私に顔を寄せてきた。私はシドをなでてあげた。
「一緒なら怖さは減るでしょ?
だから…一緒に過去を乗り越えよう。」
そうすればきっと強くなれる。一緒なら、きっと。
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