P.S.
*1*[通り魔](1/1)


新太(あらた)は目を疑った。


「周(しゅう)……おま……!どうした……!?」


ドアを開けると、親友の周が腕から血を流して立っていたのだ。


「話は後……とりあえず入れて」


「あ……ああ」


新太は戸惑いながらも周を部屋に入れた。
周は覚束ない足どりで部屋に上がり、新太のベッドに腰かける。


新太はどうしてよいのかわからず、とりあえずタオルや包帯を出してきて周に手渡した。
そして再び信じられないといった表情で周を見つめた。


「お前一体……なんで……!?」


周は受け取ったタオルで右腕から流れ落ちる血を拭う。その顔は痛みのせいか歪んでいる。


血のついたタオルを離すと、周は包帯を腕に乱暴に巻きつけた。


「きゅ……救急車呼ぶか?」


新太が聞くと、周はあわてて首を横に振った。


「いい、いい。そこまで深い傷じゃない。血もすぐ止まりそうだし」


「でも……」


「大丈夫だから」


周の有無を言わさぬ強い口調に、新太はなにも言えなくなった。


「……なにがあったんだ?」

新太は一番気になっていた質問をぶつけた。
周は新太から顔をそむけ、悔しげに答える。


「……歩いてたらいきなり切りつけられた」


「は!?誰に!?」


新太は驚いて大きな声を出した。


「知らないヤツ。帽子被ってて顔見えなかった」


「それって通り魔ってやつか!?」


「わからない……そこの公園の辺りから追いかけられて……ここまで逃げてきた」


「まじかよ……じゃあソイツまだこのへんにいんのか?」


「……かもしれない」


新太は恐ろしくなったが、親友の周を守りたい気持ちの方が勝った。
そんな物騒な奴が周を追ってきて待ち伏せていたら大変だ。


「俺、ちょっと外見てくる」

「え?」


「周はここにいろ」


新太は周に背をむけて玄関へ向かう。


「ちょ……新太!」


周が後ろから呼び止めるのも構わずに、新太は部屋を出た。


アパートから出てすぐに周囲を見回したが、特に不審な人影はない。
念のため裏手にある駐車場にも回ってみたが、そこにも誰もいなかった。







「誰かいた?」


部屋に戻った新太に周が声をかけた。


「いや……アパートの周りにはいないみたいだ」


「そう……」


周はホッとして安堵のため息をもらした。
そんな周を新太がチラリと見やる。


「……ホントに救急車呼ばなくていーのか?」


「大丈夫だから!もう全然痛くない」


いつも冷静な周が珍しく声をあらげた。
新太には周のその様子が強がっているように見えたが、何度聞いても周がいやだと言うので諦めた。


「わかった……救急車は呼ばない。……でもケーサツ呼ぼう」


「え!?」


「だって通り魔に会ったんだろ?呼んだ方がいいだろ」


「いや、いい!俺万引き見つかってケーサツ行ったことあるから嫌」


確かに周は何度か補導されたことがある。周の気持ちもわからなくないが、新太はできれば警察を頼るのが一番無難だと思った。
このまま通り魔を野放しにしたら、他にも被害者がでるかもしれなし、危険だ。


「でもさー……」


「いいから、本当にいいから」


周があまりに全力で拒否するので新太は不思議に思ったが、多分警察がよほど嫌いなのだろう、と周の意向を汲むことにした。


「わかった……呼ばねーよ。まあ今日はウチ泊まれよ。まだ通り魔近くにいるかもだし」


「悪い」


申し訳なさそうな顔をする周の肩をポンと叩き、新太は明るく言った。


「気にすんな。一人でいても退屈だしな」







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