bitter bitter sweet
ビターな友達(13/13)



「泊めてくれてありがとう」
「あぁ、仕事頑張れよ」


よれよれのTシャツにぼさぼさの頭で、何事も無かったように話す槙。


キスの事は酔ってた訳でもなければ、過ちでもない。

ただの慰めだった。
だから、お互いに気にしないのが暗黙の了解の様だ。





昨日と同じ服のまま店に出勤すれば、瀬名はそれに目敏く気が付いた。


「おはようございます。
藤さん、昨日オールですか?」


こいつも中々野暮な事を聞くんだよね。
そのくせ肝心なことは何も言ってこないから、本当の事は何も教えてあげない。



「…ちょっとね」

思わせ振りに口をつぐめば、それ以上は踏み込んでこなかった。


だから駄目なんだよ。
瀬名のそういう如何にも年下な所が、私はあまり好きじゃない。



「藤、」

そう、こうやって他人との時間にもガツガツ入ってこれなきゃね。


「おはようございます、三沢さん」


もう悲しくもない。
槙にもらった元気があるから、この人の事は忘れなきゃ。



「お前…昨日帰んなかったの?」
「友達の家に泊まりましたよ」

「友達って、昨日のあいつ?」


何だってこんなに追求してくるんだ。
三沢さんは私なんかに興味無いくせに本当に自分勝手。


「そうですよ。電話出れなくてすみませんでした。でももう、話すこともないんで」

「なんだよそれ。もうあいつに乗り替えたわけ?」

「そう思ってくれても結構です」


その場にいた瀬名は、あたふたとしながらも私たちの会話から耳を離さない。




「…ちょっと来い」

瀬名の存在を厄介に思ったのか、三沢さんが突然私の腕を掴んで引いた。
その力が思いの外強くて反射的に身を固くすると、彼は悲しそうに顔を歪める。




なんで。
なんで三沢さんがそんな顔するの。
私の方が沢山、沢山苦しいのに



「そんな顔しないで。
話があるとか言われてのこのこ貴方の家まで行った私の惨めさが分かる?
三沢さんがそんな顔するのは、狡い」



あんなキスシーン見せられてもまだ現実が分からないほど、私は馬鹿じゃない。





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