凍える夜明け
[愛](1/5)





愛なんて、どこにもないと思いながらも、愛に飢えていた。





「あ、小坂、この書類お願いできる?」


「あ、うん、おっけー!これできたら田中さんに見てもらった方がいいよね?」


「よろしく」




小坂愛。
都内の会社に務めてる普通のOL。


愛っていう名前は正直そこまで好きじゃない。


親が勝手に誰からも愛されてほしいって思って付けたんだろうけど、生憎愛されるなんて、ないし。




目の前でお礼に、とコーヒーを入れてきてくれた彼は

飯島朝海くん。

私と同期で、わたしの好きな人。




「こないださ、……」



お昼のおいしいご飯のお店とか、付き合ってる人の話とか、彼と話すのはすごく楽しい。



なによりも、朝海くんの笑った顔が好きだ。



「いいね、今度いこう」




なかなか女の人がいないこの部署では仲がいい方だと思ってる。


好きだけど、思いを伝えることはなかなかできない。


付き合えなくても、そばに居られればいいかな、なんて思っていた。










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