部屋におっさんと私


大人の嘘と子供の正論 (1/9)








◆◆◆



二十歳は、難しい年齢だ。

大人扱いも子供扱いもされる。

大人であり子供である。都合よくコロコロ変わるのだ。



「前は、ガキは勉強でもしてろっつってたくせに……!」



優子さんが帰った後、枕を壁に投げ付けてイライラを発散した。

そしてベッドにうつぶせに寝転がり、うーうーと意味もなく唸る。



……そうだ。夏川さんは元々、両親がいない私の面倒を見るために隣に住み始めたのだ。

でも、もしも私の保護者役が足枷になってるのなら……、それはおかしな話だ。

夏川さんから、面倒を見ることを提案してきたのだから。



本当に、私のせいで再婚ができないと言っていたのなら、さっさと出ていけばいい。

頼んだ覚えなんてない。



……と、言えればいいのだけど。

今の私には、絶対言えないことだ。



優子さんと夏川さんが再婚すれば。


翼くんたちは田舎へ引っ越すこともなく、夏川さん貯金も結構ありそうだから、不自由なく楽しく生活できるだろう。

夏川さんは念願の子供ができるし、一家の大黒柱として充実な生活を送れるだろう。

優子さんはもう万々歳。


幸せな四人家族って感じの光景が目に浮かぶ。



不幸になるのは私だけ。

夏川さんは、私より翼くんの方が可愛いと言っていたんだし。

……私、もしかしなくても邪魔者なような気がしてきた。


でも、再婚してほしくないよ。



126

←前次→

→しおり
/165


⇒作品レビュー
⇒モバスペBook

[編集]