部屋におっさんと私


ホワイトデーからの子供 (1/8)







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人を犯罪者として罰するのは、くっそめんどくさいものなんだと中1の時に知った。

痴漢にあった時だ。我慢しようと思ったのにお兄さんに助けられてしまい、警察沙汰になったことがある。

何時間も警察署でアレをドコに押し付けられアレコレされたと事細かに説明しなきゃいけなかった。中1の私は勿論トラウマになった。


その上、大して重い罰を受けさせることができないのだ。

ナントカの祈りの桜みたいに、射殺して終わりになればいいのに、と何度も願ったものだ。


今回の永井くんのことも、まあ事細かに警察に説明し。

何度か警察に呼ばれたりしたが、いろいろ夏川さんが助けてくれて私はあまり負担にならなかった。

永井くんも、容疑を否認しなかったからもあるが。





「じゃあ、永井先輩はムショにぶち込まれる感じなんですか」

「うん。いろいろお世話になりました」



数週間経って落ち着いた頃。家に来ている神田ちゃんに現状を説明した。


どうやらあの日、神田ちゃんは夏川さんの仕事先を調べる為、私の家の近くの建築関係の会社に一通り電話をかけたそうだ。

そういえば、近くに勤めてるとは話していたが、会社名なんて言ってなかった。本当に神田葵様様である。



「……それにしても柊先輩、立ち直り早いですね。つまらな……、安心しました」

「本音がぽろっと出てるよ神田ちゃん」

「無神経なこと言いますけど、図太いですよね先輩。両親亡くしていろんな人に裏切られ、挙句こんなことにあって」



そう言って、縫ってる途中のネクタイを持ち上げた神田ちゃん。永井くんに切られた赤いネクタイだ。

神田ちゃんは裁縫も出来る。ボタンがとれた服はすぐに捨てていたような私が裁縫なんてできるわけないから頼んだのだ。


どうやら縫い目が目立たない縫い方とかあるらしい。中学の時授業でやった気がするが覚えちゃいない。



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