部屋におっさんと私


彼氏か元彼 (1/6)








◆◆◆



クリスマスの朝、つっても昼頃起きた時、昨日やらかしたことを思い出してとてつもなく消えたくなった。


酔っていて記憶が途切れ途切れだが、一応覚えてはいる。自ら夏川さんに胸を触らせていた。



バカだ。最悪だ。恥ずかしい何してたんだ私あああ。

しかも何より、全然夏川さんに相手にされてなかったことが最高に恥ずかしい。



「何してんですか、柊先輩」

「……昨日を抹消したい」

「頭叩くくらいじゃ時間変動なんてできませんよ」



ぼかぼか頭を叩き続ける私に呆れた様子の神田ちゃん。

今は夕方6時、昨日諦めたイルミネーションを、一昨年まで通っていた高校の近くの駅まで見に来ている。

神田ちゃんの知り合いがデザインに携わったというイルミネーションは、丸の内ほどの豪華さは無いにしろ、見てて満足できるものだった。



「ちょっと私、お手洗い行ってきますね。先輩も行きます?」

「……いや、ここで一人で頭冷やしとく」

「それがいいです」



クールな神田ちゃんは、私を置いてさっさと言ってしまった。

近くの手摺に腰掛け、はあ、と何度目かの溜め息をつく。

きらびやかなイルミネーションを楽しむ心の余裕がない。記憶って簡単に消去とかできればいいのに。

おっさんの記憶も勿論消去してやりたい。



「あれ、もしかして弥生……?」

「え?」



突然名前を呼ばれ、振り向くと男性が1人立っていた。


それなりに整ってる顔立ち。誰だっけ、と記憶を少し探り、ああ、と声をあげた。

彼氏の永井くんだ。いや、彼氏なのか元彼なのか曖昧だけど。

高校以来だから約2年ぶり。かなり大人びていたから気付かなかった。



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