部屋におっさんと私
クリスマスイブの夜 (1/8)
◆◆◆
「ひいちゃん……、隣いい?」
大学の食堂で建築用語じゃない方のラーメンを神田ちゃんと共に食べてると、トレーにカレーをのっけた宮崎くんことみゃーちゃんが寄ってきた。
相変わらずの金髪に、人相の悪い顔。低い声にはとても似合わない優しい口調。
「い、いいけど……」
「ほんと?ありがとう」
お礼を言い、私の隣に腰掛けた。向かいに座る神田ちゃんを見ると、状況がよく理解できていない様子だ。
「えっと、神田ちゃん。前、仲良くなった、……みゃーちゃんです」
「……みゃーちゃん?」
何頭おかしいこと言ってんだ柊先輩は、と神田ちゃんの顔に書いてある。
私だっておかしいと思うよ!と目で訴え返す。
そんな私たちのやり取りをお構いなしに、隣のみゃーちゃんは、テーブルに小さい猫の人形を置いた。
「な、何してんのみゃーちゃん」
「え?ああ、この子、チャコって言うんだけど。チャコもお腹すいたかなあって思って」
「……」
「みゃーちゃん、ちゃこ、おなかすいたよー。たべたいよお」
机の上で子猫の人形をめちゃくちゃ器用に動かし、ちょっと高い声を出して猫の声を演じだしたみゃーちゃん。
神田ちゃんが生ゴミを見るような目でみゃーちゃんを見ている。気持ちは痛いほど分かるけどやめてあげて。
「……チャコ、か、可愛いね。で、でも、人形だから食べられないんじゃないかな……」
「ひ、ひいちゃん、なんでそんなこというの……?ちゃこ、いきてるもん」
「……あはは」
とりあえず苦笑いで返す。
本当に生きてるかのように動かしているのを見ると、どれだけこの人形を動かして遊んでいたのかが分かって鳥肌が立った。
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