部屋におっさんと私
愛をこめた手料理 (1/8)
◆◆◆
豚汁。
それは味噌汁が無性に飲みたいと思った朝にインスタントのカップ味噌汁しか手段のない私には、まず手料理として作ることができるのかという疑問から入る存在。
無情にもその豚汁を作れと要求してきた夏川さん。チョイスがおっさん。
勿論作れるはずもなく、私はバレンタインでいつもラングドシャやシュークリームなど高度なお菓子を作ってくれる神田ちゃんに頼るしかなかった。
「……え、なんで暖房つけっぱなんですか?」
大学帰り、そのまま一緒に私のアパートに来た神田ちゃんは、部屋に入ってすぐ一言。
「なんでって……。寒いじゃん」
「まだ12月入ってばっかだし……、って、28度!?ずっとこの温度で消し忘れてたんですか?」
「え……、わ、忘れてたわけでは……」
普通、つけてるものじゃないの?
お父さんが生きてた頃、豪邸では365日毎日暖房なり冷房なり、どちらかが必ず一日中ついていた。
そんなに珍しいのかな、と思ってると、神田ちゃんから深いため息が。
「……電気代、先月いくらでした?」
「えーと……、15000くらい?」
「……それ、光熱費全体ですよね」
「いや……、電気代だけ」
「馬鹿じゃないですか!?」
普段感情的にならない神田ちゃんが、珍しく怒鳴って驚く。
そ、そんなに高いの?
「この1DKでこの時期にその値段……、ありえませんよ!あの前の豪邸ならまだしも……」
「……前のあの家は、8万か9万だったよ」
「……これだから金持ちは」
舌打ちして、即エアコンのリモコンを取り、停止ボタンを押した神田ちゃん。
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