with添い寝ドクター【3】 episode95 ブロッコリー(1/2)


※朝の回診


「おはよう。調子どう?」



昨日は『手術がんばるね〜』と言って笑っていたけど、今朝はボーッとしたままテレビがつけっぱなし。



「おはよう月乃」



軽くからだを揺すってみた。




『んあ?おはよう』




「朝飯は食ったのか?」




ひとつひとつの食器に被せられた蓋をとっていく。




「全然食ってないじゃん。食事も治療なんだから、ほら」と月乃の右手にフォークを握らせた。




『あんまり食欲ないんだよね』




「少しでも食べとかないと」




『いらない』




「今日はいつもより多めに採血するから貧血で倒れないようにちゃんと食べとけ」





手術中に輸血が必要になった場合に備えて、自己血(自分の血液)を輸血できるように多目に採血(貯蓄血)しておくのだ。




フォークを握ったまま隼人先生の話を聞いていた。





「貧血にならないように造血作用のあるもの食べて」




『どれ?』




「ひじき煮とかブロッコリー」





それ、どっちも好きじゃない。





「手術に14時間かかるんだからさ食べて体力つけとかないとな」





14時間も?』





「そうだ。朝から晩までの大仕事だ」





『大変そうだね…』





「どうして他人事なんだよ?自分のことだろうが…手術受けるのおまえなんだぞ」






わかっちゃいるんだけど。





「俺の見てる前で食べてみな」




『あとで食べるからいいよ…』




「あーんして」




無理矢理
¨ブロッコリーのおかか和え¨を
口の中に放り込まれた。




まずっ!

ブロッコリー食べたの何年ぶり?





「おいしくてもまずくても体のため」




『出していい?』




ティッシュ!
ティッシュ取って!





「ちゃんと噛んで飲み込んで」




『変な味。まずいよ』




「食べれた?」




『先生はブロッコリー好き?』




「俺もブロッコリーはな〜、ちょっと苦手なんだ(笑)」




『一緒だね』




「でも俺はカリフラワーなら美味しく食べれるから、おまえと一緒にはされたくないっ」












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