ONYX Black


#6/16 −夢− (1/3)
―そのときはさ、よろしくな








1ヶ月が経っても、“今度”はこないままだった。


別に、本気で欲しがったわけじゃないからいいんだけど、どうも気になったままで落ち着かない。






「スツールスケッチ、直のやつ貼られてたね」


昼休みになってお昼をとっていると、いっちゃんがさっきの授業のことを言う。


デッサンの授業で、先生が「今までの上手く描けているものだ」って、黒板に画用紙を貼った。


2ヶ月の間にあった、3つの課題分あって、全部で6枚。


その中の1枚が、私の描いたスツールスケッチだった。


「うん。ちょっと嬉しい」


「直、頑張ってたもんね。凄いよ〜」


えらいえらい、って、ペットを可愛がるみたいに、ワザとらしく私の頭を撫でる。


「いっちゃんご褒美欲しい〜」


「あ、調子に乗った」


「あ、褒められタイム終わっちゃった」


いっちゃんは大学をでてから来たから2歳上で、友達だけど、姉妹みたいでもあった。


それに、偶然その大学が千尋くんと同じ。


入学したてで初めて話したときに発覚して、親近感を感じた私が懐き、仲良くなった。


「直のお弁当、美味しそうだね」


「このパエリア、千尋くんが作ったからね〜」


昨日の残りものだ。


「褒めてくれたご褒美に、エビをあげよう」


「え?」


パエリアに混じった大きなエビをいっちゃんのお弁当箱に移すと、いっちゃんは固まっている。


「あ、エビ嫌いだった?じゃあイカを…」


「“千尋くん”?」


「あ、従兄妹」


「…あたしと同じ大学だったっていう?」


「ん」イカを放り込む。


「一緒に住んでるっていう?」


「んー」エビを摘む。


「篠原千尋?」


「うん。…あれ、なんで名字し 「直の従兄妹って篠原千尋!?」


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