鬼に衣【番外編】



○閑話・葬送狂奏曲(1/12)
黒鉄の男の咄



「ねえあんた、私のこと好きでしょ」

「……自分の趣味の悪さに絶望する程度には」

「失礼過ぎない?」

「だってよりによってお前だぞ……?」

「うわ。余計に失礼」



「それで?」

「私もあんたのこと好きよ」

「正気か?」

「わかった。あんた失礼なのがデフォルトなのね」

「今更気づいたのか」

「私以外には丁寧じゃない!」

「自分に絶望する程度にはお前を好んでいるようだからな」

「好きなら丁重に扱いなさいよ!」

「天邪鬼なんだ。多分」

「適当ばっかり!」



「それでお前ら結婚するのか?」

「「…………」」

「……するのか?」

「……しましょうよ。好きだもん」

「お前も趣味悪いな」

「絶望的にね」

「似たもの夫婦でいいじゃないか」

「似てませんこんな根暗と」

「似てませんこんな高慢ちきと」

「……じゃあ、相性がいいんだな」

「「それならまあ……」」





多分俺は、あいつと会った頃にはもうまともではなかったけど。

そんな風に言い合っていた頃は、まだ少しはまともだったんだと思う。


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