『彼は私にこう言った』
☆[あの日みつけたのは
俺のひだまりでした](1/13)




『あの日みつけたのは
俺のひだまりでした』
〜第1話〜





「ほら、ちゃんと
ご挨拶しなさいっ」

「あ…えっと、
は、はじめまして
立花牧兎(タチバナマキト)
…です」


初めてあったのは
君がまだ小学生に
なったばかりの頃。


人見知りなのか、初対面の
俺への自己紹介は
すごく困った表情で、
お父さんの後ろに
隠れたままだった。


牧兎の父、
立花帝兎(タチバナタイト)さんは
会社の先輩で、
7歳も歳が離れている
俺をいつも実の弟のように
可愛がってくれていた。


あの日、帝兎さんの家に
行ったのは
空港に迎えに来た
帝兎さんが俺の帰国祝い
をすると言って強引に
連れて来られたから。


「どうだよ〜名波(ナハ)っ
俺のプリンセスはっ
可愛いだろ〜」


牧兎にほおずりしながら
帝兎さんは幸せそうに
言った。


「帝兎さんに
そっくりですね」


そういって笑いあったのを
まるで昨日のことのように
鮮明に覚えている。


でも、自分の娘を溺愛して、
後輩の俺にもいつも
親切にしてくれた帝兎さん
はもうここにはいない。


享年34歳という若さで
帝兎さんは妻と一緒に
天国へと行って
しまったんだ。


たった一人の
愛娘を残して。







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