『彼は私にこう言った』
☆[僕のヒーロー](1/12)




『僕のヒーロー』
〜第1話〜





ワンワン


「あっち行ってよぉっ」


吠えてくる犬に
半泣きで言う僕は
今ジャングルジムの
てっぺんにいる。


さっきまでは僕と同じ
くらいの年の子で
にぎわっていた公園なのに、
今は僕と一匹の怖い犬だけ。


なんでいつも
僕ばっかり狙われるのっ


半泣きになって
そう思った時、
走ってくる足音と
女の子の声が聞こえた。


「あんた、名前は?」

「…いちか…だよ。
葉倉衣一夏(ハクライイチカ)」

「私は朝比弓(アサヒユン)。
いちか、私が
助けてあげるっ」


ゆんはそういうと
吠えている犬に勇敢に
立ち向かい、見事
勝利してしまった。


「もう大丈夫だからっ」


ゆんは僕にむかって
Vサインを向け、にっと
笑顔で言った。


ジャングルジムから
その光景の一部始終を
見ていた僕は、
本当に安心して、
自然と涙が頬をつたった。


ゆんは泣いている僕の頭を
優しくなでながら
僕が泣き止むまで
一緒にいてくれた。


それから、
ゆんは僕にとって
ヒーローになったんだ。







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