『彼は私にこう言った』
☆[佐藤と申します。](1/12)





『佐藤と申します。』
〜第1話〜




新調したばかりのスーツを
着せられ、車に乗せられた
俺は普通の男子高校生。


でも今日は許婚に
会うために立派な庭のある
旅館に来ていた。



両親から「許婚がいる」、
なんて聞いたのは
つい昨日の話。


でも今まで彼女がいた
こともモテた記憶もない
俺は、そんな"許婚"
なんていうおいしい
シチュエーションにすぐに
食いついたのだった。



相手の両親と俺の両親は
大学時代からの友達で、
結婚して子どもが出来たら
その子どもたちを
許婚にして結婚させたら
ずっと4人仲良く一緒に
いられると思ったらしい。


そんな意見を出す父親達も
なかなかすごいが、
反対もせずむしろ賛成
している母親たちも
すごい人達だと思った。


でもまぁとにかく
これで俺の"一生独り身"
という淋しい運命は
回避出来たのだから文句は
言わないことにしよう。



かわいい子だといいなぁ。

「貴史さま。バスタオルは
こちらに置いておきますね」
とかとかとか!

優しくてかわいい声で
言ってほしいな!

あと、「お背中流します」
なんて男の夢だよなぁ。




「失礼いたします」

「どうぞ〜」


仲居さんの声に母さんが
返事をすると静かに
ふすまが開いた。


「遅れて申し訳
ございません」



……え?

ぉお男‐!?


入ってきたのは
背の高い、すらっとした
スーツの似合う男性。


「ななななんで
俺の見合いの相手が…男!?
信じらんない!」


こうして俺の恋は
ハプニングから始まった。







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