『彼は私にこう言った』
☆[成仏喫茶へようこそっ](1/16)




『成仏喫茶へようこそっ』
〜第1話〜




「いらっしゃいませっ」


ドアベルの軽やかな音を
合図に、私は笑顔で
お客様に挨拶をする。



ここは迷える子羊が
集まる喫茶店。


"成仏喫茶"


私はマスターの
白澤桐斗(シラサワキリト)さんと
ここでたくさんの
人たちを見てきた。


そして今日も、
迷い子のお客様が
やって来る。



「いらっしゃいませ。
ご注文はなにに
なさいますか?」

「じゃあ、アイスコーヒーを…」

「かしこまりました。」


Tシャツにジーンズ姿という
夏服の彼は暗い顔をして
カウンターに座ると
頭をかかえてふさぎこんだ。


「お待たせしました」

「ありがとうございます」


彼はそうお礼を言うと
マスターに差し出された
アイスコーヒーを勢いよく
飲み干した。


今は冬だというのに
夏服だし、アイスコーヒーなんて
注文するし、やっぱり
死んだ時の服装って
大事だなぁと
つくづく思う。


「縁(エニシ)さん。
それ片付けたら
休憩してください。
はい、これ」

「えっこれ
いいんですか!?マスター!」

「えぇ、いつも頑張って
もらってますから」

「うわ‐っ
ありがとうございますっ」


そして私はマスターから
この店のイチ押しケーキを
受け取り、さっきの
お客様の隣の席に座った。







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