死に至る病
[cure](1/20)
ある朝目覚めると、隣に千陽がいなかった。
部屋を見回すと千陽は窓の外を眺めていた。
街中が白一色に染まっている。
初雪だった。
千陽の宝石のように綺麗な瞳から涙が落ちた。
「後で、ドライブでも行こっか」
俺は後ろから千陽を抱きしめた。
千陽は「はい」と頷いた。
しばらくそのまま雪を見続けた。
行き先はなんとなく決めていた。
俺たちにはもう何も怖いものなどないということを千陽に教えたかった。
千陽に似合うできるだけ寒くない服を選んだ。
「僕、この服好きです」
そう言って千陽は嬉しそうにその服を抱きしめた。
理由はわからないが、こんな風に千陽は時々着る服を俺に選ばせた。


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