お題詩


生きることが 少し分かって すごく分からなくなった (1/1)




今日は、なんのお話をしてくれるの?

私は抜け殻

一人、取り残された抜け殻


鉛筆を噛んで噛んで噛み切った。
炭の冷たくて硬いパキッとした感触が舌の上に乗って絡まって

鏡を見た

笑いを忘れた私の顔に反映して
鏡の奥の私は気持ち悪い顔をして微笑んでいた



笑顔を忘れた私を
眼鏡を光らせて親が呼ぶ


今日は、何のお話をしてくれるの?


昔、私はそう言って父の膝の上に乗って、手に持つ絵本の擦り切れた表紙が大好きだった



毎夜読まれる絵本の内容よりも
こうして父の膝の上の大きさに揉まれながら抱き締めてくれるのが好きだった

それはある日突然

例えて言うなら、雷が頭の上から降る感じ

その亀裂が家族をバラバラにした感じ



口で攻撃を繰り返す両親の家庭内戦争
私と妹は自分の部屋という非難場所に逃げた
昔、私はそう言って父の膝の上に乗って、手に持つ絵本の擦り切れた表紙が大好きだった


本当はね


絵本なんか好きでも無いの

寝る前必ず来てくれた

一緒に過ごす時間の方が大事だったの

擦り切れた絵本ほど、私の心を見出しているような感じで



今日は、なんのお話をしてくれるの?


そんなのただの誤魔化しの口実だった


絵本の名前も、中身も覚えているのに
生きることが、少し分かって、すごく分からなくなった


昔がこんなに愛おしく感じたのは

最初で最後の涙を流した時だった


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