不本意ですが付き合ってあげます
[無自覚](6/6)
答えなんて聞かなくてもわかりきっている。でも、少しの可能性に希望を抱いている。
「好き」
知ってる。わかってた。うん、何も変わらないんだね。
今までは欲しかったものがあればほとんどのものが自分のものだった。あれが欲しいとお金を出し、それが欲しいと笑顔で手に入る。つならなくもあり、不自由のない日常だったのに。
欲しいものが手に入らないって、こんな気持ちなんだろうか。
握りこぶしを作って血が出るんじゃないかってくらい。悔しい。
「だと思う、多分...」
「.....へ?」
その後に続けられた言葉が信じられなくて思わず間抜けな声を出してしまったと自分でも実感する。
「告白しても、まだそばにいれるって安心してたんだ。でも、俺は今翔馬の隣りいなくても、お前がいると安心する。これって、ただ俺が誰かに依存してるだけなんじゃないかって、そう、今、そう思った...」
結局は誰でも良かった。そう思ってしまうのが嫌なんだろう。どこか悲しそうな表情でそう話す成川。
「でも、一目惚れは確かだし、それからもずっと好きだって思ってた...けど、最近はその感情すら怪しくなってきた」
最低だよな...。そう呟く成川に俺は何も声をかけられない。
ごめん、成川。成川はそのことを真剣に考えてるんだろうけど、俺にとっては喜ばしいことなんだ。
そう考えた俺は、物凄く舞い上がっていたに違いない。
そうじゃなきゃ、体は勝手に動かないし
成川の顔がドアップで映るはずがない。
「...たか、せ...」
キスなんて、するはずじゃなかったんだから。
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