不本意ですが付き合ってあげます
[無自覚](1/6)






これがいわゆる、普通の一般家庭と言うのだろうか。



母親を見てると、雰囲気がどことなく似てるなと思った。父親を見てると顔が似てるなと思った。他人の親なんてこれまでしっかりと見ることはなかったから、俺にとっては全てが新鮮だった。



部屋へ招き入れられたことも、食卓に一緒したことも、そして...誰かと風呂に入ることも。






「....」

「ス-...」






寝てる。顔がお湯に浸かりそうなくらいくったりとぐっすりと気持ちよさそうに寝ている。



確か、お風呂で寝るのってあんまり良くなかったよね。



そう思いながら成川を起こそうと手を伸ばすと、ふと、目に入った。



入浴剤も何も入っていない湯船だ。そりゃ見えてしまうものは見える。漫画やドラマの世界じゃありえないだろうけど。






「...無防備だよねぇ」






男にしては細い体つき。もうすぐで骨が見えてしまうのではと心配になる。そんな薄い胸板に赤く小さな2つの突起。伸びそうになる手を抑え、ゴクッっと喉をならし目線は下に行く。






「っ...//」






口元を手で抑え顔を逸らす。
これ以上見てしまうと良くないことを起こしてしまいそうで、成川を起こすことにした。






「成川、成川起きて」

「ぅ...ん?」

「お風呂で寝ちゃダメだよ」

「...鷹生?」

「うん」

「...なんで入って来てるんだよ」






体を起こし、嫌そう、じゃあないけど不満そうに顔を顰める成川。最初に比べるとすごく表情豊かになっていると思う。それが嬉しくて笑顔を見せる。






「早く入った方がご両親を待たせなくていいかなって」

「俺の意思は無視か。着替えも持ってきてないぞ」

「大丈夫、お母さんが用意してくれた」

「お前の母さんか」

「成川のお母さんでしょ」






と、まぁこれはただの口実にすぎなくて。
本当は下心があるなんて口が裂けても言えない。好きな人の全てって見ておきたいって思うでしょ。少なくとも俺は思った。さっきのはちょっと危なかったけど。



湯船のお湯で体を軽く流す。成川は足を折りたたんで横に移動してくれた。
眠っていたからまだ体は洗っていないようだが、髪は湿気を利用してオールバックにしていた。



普段前髪があるので不思議な感じだけど、よく似合っている。



学校の生徒は成川をブスだと言う。けどもっとよく見てほしい。少しつり上げられた死んだ魚のような目、少し高い鼻、整った唇、感情の乗らない表情。俺にはこれが可愛く見えて仕方がない。



成川の魅力は俺だけが知っていればいいんだけどね。



そして目は自然と下の方へ移動していく。今は足を閉じていて見えないが、それが少しエロくも感じる。



って...これじゃあただの変態だね。



健全な男子高校生なんだなとこんな所で実感がわくなんて思いもしなかったけど。






「...お前さ、人と風呂入るの抵抗ないのか?」






そう言った成川の顔を見ると、少し赤くなっていて。もしかして...照れてる?成川が?成川の方があんまりそういうの気にしないのかと思っていたが、どうやらそうでもないらしい。






「気にしてないよ。なに、恥ずかしい?」






少しからかい気味でいえば成川は慌てた様子で






「違う、そうじゃなくて...誰でも、気になったら見たくなるだろ?そう言うのお前嫌かなって」






成川の視線が俺の体に行く。



ああ、なるほどね。
そう言えば成川も健全な男子高校生だった。








- 60 -

前n[*][#]次n
/82 n

⇒しおり挿入


⇒作品?レビュー
⇒モバスペ?Book?

[編集]

[←戻る]