不本意ですが付き合ってあげます
[そこまでする?](1/14)
人に迷惑をかけることはしたくないし、勿論されたくもない。そんな考えを持ち始めたのはいつ頃だっただろうか。あまりよく思い出せない。
「なるちゃんおっは〜」
登校一発目でテンションの高い挨拶をしてくる國和陣。覚えているだろうか。体育の授業で俺が鷹生と出会うきっかけを作った奴だ。
あれ...俺が鷹生と付き合うことになってしまった元凶ってこいつじゃ...。
「なんか怖い顔してるけど俺なんも悪くないかんな〜???」
「エスパーかよ。なんで俺の靴箱の前にいるんだ?」
例え元凶がこいつだったとしても、もう起こってしまったことは取り消せないし、責めたとしてもただの八つ当たりにしかならない。ダサい真似はやめておこう。
「んー。見張り番ってやつ?」
「下駄箱見張るってなんだよ」
「俺自ら立候補したんだからありがたく思えよー」
「いや意味わかんねぇ」
「詳しいことは荒方に聞いて」
いつも遅刻ギリギリに来る奴なのにどういうことだ?言ってることも意味わからないし、翔馬がなんだって言うんだ。
「言ったでしょ。鶴を助けるって。だからクラスの皆に協力をお願いしたんだ。名付けて、『なるちゃんを守りましょうの会』!!!」
......だっせ。
じゃなくて、そんなに俺の事を思って...。
一緒に登校していた幼馴染を感動の眼差しで見ては惚れ直す。
「でもなんで下駄箱を見張ってるんだ?」
「もー、昨日下駄箱やられてたでしょ?だから朝早く来て、何もされないよう見張る係を決めたんだよ」
少し頬を膨らませて話す姿が可愛くて話の内容がすごくどうでも良くなってきた。いや最初から別にイジメなんて気にしてないけど。
でも、翔馬はわかるが、朝来るのが遅い國和が俺のために協力するなんておかしい。何かで釣ったのか?まさか俺を守る代わりに翔馬をくれとかじゃ
「僕が『守る会』を提案したら、僕が何も言わなくてもどんどん話が進んでいってね。みんな、鶴のために張り切ってるよ」
さらに疑問が深まる。何でだ??皆が俺にそこまでする理由は?面白そうだから?同情?わけがわからない。
そこまでしなくても...
そんな思いが顔に出ていたのか。翔馬は笑って答えた。
「ねぇ鶴。鶴は自分で思ってる以上に、皆に好かれてるよ」
目を丸くする。
他人には興味がなく翔馬の隣を陣取っている俺がどこに好かれる要素あるんだ?クラスの関わりは最低限だし、寧ろ俺の存在はあまり認識されてないものだとばかり思っていたんだが。
「ま、そーゆーことだから?俺らは好きでやってる事だしお前は安心して鷹生とイチャっとけばいいよ」
「國和...」
「あ、でもどうしてもって言うんだったら文化祭でやる曲、俺に決めさせてくれな?」
「...1曲だけな」
「やりぃ♪」
嬉しそうにする國和を手で押しのけて上履きを取る。
今日の下駄箱は綺麗なままだった。
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