白と雪
[正体](1/10)



低くて
掠れた
枯葉のような声。


「佳奈」

「同意なくてももう死にかけだし
いけるだろ」

「佳奈じゃ、ない?」

「遅いよ」


佳奈が倒れたと思ったら
中から人が出てきた。

ちょうど、
佳奈が人形に入ったのを逆再生するような。

でも出てきたのは佳奈じゃなかった。


大きな身体の男。


「だれ……

「もう見える?」


薄手のTシャツと破れたパンツ。

顔は、髭が生えていて、父よりは若いと思う。

離れた目が、細まる。

笑っている。


「さ、器の交換しようか。
肉眼でオレが見えるってことは、もう抜けてるようなもんだろうしチャチャッと終わらせるよ」

「ま、って、佳奈、」

「佳奈じゃねぇって。
気づかなかったら気持ち良くイけたのになぁー?」

「い」


腕を掴まれたと思ったら
私の腕が二重になった。

内蔵を掻き回されるような気持ち悪さと
全部溶けていくような気持ち良さ


これは
私が死ぬ?


「あっちで佳奈ちゃんと仲良くしてな」


半透明な男と同じ色彩の腕

死ぬのだろう。

佳奈じゃない誰かに器を譲って
私は死ぬのだろう。


抵抗したら良かったのかもしれないけど
どうしたら良いのかもわからない。

このままされるがままでいたら
佳奈に会えるのかな。


目を閉じた。



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