愚かな唇で、窒息死。

1[わたしのすきなひと](1/8)




 なぜ彼を好きになったの、って聞かれたら、私は笑って答えるだろう。


 彼が私を「可愛い」と初めて言ってくれたからだよって。




 彼にとってはそれは日常の何でもない出来事。


 彼にとっては私なんて通りすがりのただの女の子。


 誰もが羨む、可愛らしい容姿の彼女を友達に持った私は所詮彼女の素敵な人生を引き立てる脇役にしかすぎないのだ。


 私はきっとどんな小さな舞台ですら、スポットライトの当たらない陰に潜む脇役だ。



 でもそんな陰の役者に素敵な言葉をかけてくれた、ヒロインの王子様。



 彼が言ってくれたみたいに、自分が可愛いだなんてまさかそんなことはあり得ない。けれど、




 私にとってその言葉は大切で素敵な、特別な思い出。きっとストーリーに練り込まれないけれど、私にとっては愛すべき、特別な思い出。











わたしのすきなひと



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