あの日、君がキスしてた

[あの日、](1/4)

あの日のキスが、忘れられない。

あの日は確か、四月も末で。

だけど、日本の半分より
北側にある私の住む町には
まだ、桜が少しだけ残っていて。

すぐそこまで五月を
連れて来た空気が、
胸の中でむせ返る程だった。

まだ上手く馴染まない
制服に身を包み、

高校生になってから
下ろし始めた髪が、
少しまだくすぐったくて。

一人ではまだ迷子になりそうだから
上手く歩けない校舎。

だけど散りかけの桜があまりに綺麗で、
わざと中庭を通ってみようか、だなんて。

風邪で休んでしまった分の
宿題のプリントを
職員室に出しに行こうと
していたときだったかな。

男の子と女の子が
桜の木の下で、

キスをしていた。

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