「慧ってオムライス好きなの？」

「ん？　嫌いじゃねぇな」

「あれ？」

「なんだよ？」

「ううん、なんでもない」



今の慧の口ぶりからすると、すごく好きってわけじゃないみたい。


だけど、さっきから慧は、あたしが作ったオムライスを今までに見たことがないくらい満足そうな顔をして食べてくれていて。

だから、てっきり、すごく好きなのかと……。


あっ！

もしかして、ただ単にオムライスが好きっていうのが恥ずかしいのかもしれない。

だってほらっ、慧とオムライスってやっぱり似合わないんだもん。


そして、慧はあっという間にあたしが作った料理をきれいに完食してくれた。



「うまかった、ごちそうさま」



そう言って、あたしに微笑みかけてくれる慧。


うわぁ。

な、なに、これ。

すごく嬉しいんだけどぉぉ。


これだけ喜んでくれると、不思議とまた何か作って慧に食べてもらいたいって気持ちになる。



「これからも、たまには私も作るね」

「たまにかよ」



呆れるように笑って、慧が言う。



「だって、あたしも慧の美味しい料理を食べたいんだもん」

「わかったよ。俺もたまに作ってやるよ」

「えぇ、たまにじゃなくて……」



慧と過ごす

すごく穏やかな

幸せな時間。


こうしてなんとか、あたしの手料理作戦はうまくいったのだった。