草食系野獣カレシ
 Ep:15 またしても修羅場?(23/23)

あ、違う。

今はあたしと慧の話じゃなくて。

大翔と太一の話だった。



「とにかく、関わらないでよ」

『あぁ、わかった』

「じゃあね」



太一に伝えるべきことだけを伝えて電話を切った。



「これでいい?」

「………………」

「………………」



え? 何?

ここまでしたのに無視?

さすがに返事くらいしてくれたっていいでしょ!



「黙ってるってことはここへ太一を呼んだほうがいいってことなんだ? あ、そう。わかった、じゃあ今すぐ太一をここに……」

「あぁぁぁ。何やってんだよ。呼ばなくていいに決まってんだろ!」



そう決まってるなら、ちゃんと返事くらいしろ。



「もう行こうぜ、みのり」



テーブルの上の飲み物を手にして大翔は女に席を変えるように促している。


それにしても、なんでそんなに偉そうな態度をとれるんだろう。


女は大翔を守る為に必死で太一と向き合っていたのに。

この男、本当に最低、最悪男だ。



「結衣、おまえ、色々なこと黙ってて……最低だな」



なんて、信じられないような捨て台詞を吐いた。


はぁぁぁぁ?

こ、この男は何言った!?

最低はおまえだろ。


だからって、ここで引き止めたらダメだ。

また無限ループに入り込む。

我慢だ、我慢するんだ、結衣。


『ふざけるな!』って叫びたい気持ちをグッと堪え、逃げるように去っていくバカ男の後ろ姿を眺めていた。



「本当、アイツ、何?」

「いやぁ、楽しませてもらったよ」

「そう? そりゃ良かった」



それにしても、さっきまで修羅場だったはずなのに、あたしたちに目を向けている人は誰一人いない。

きっと、あの程度だと単なる賑《にぎ》わいに思えてたんだろうな。

周りにはそれ以上の声の大きさで、盛り上がってるし。



「そういや、さっきまで何の話をしてたんだっけ?」



真希と真剣に話していたはずなのに、バカ大翔の所為で何を話していたのか忘れたよ。



「んー? 忘れたんなら、もういいんじゃない?」

「それもそうだね。今日はなんか疲れちゃったから、悪いけど先に帰るよ」

「了解」



バイトまでの時間を大学で過ごす真希に手を振り、あたしは一足先にカフェテリアを後にした。

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