草食系野獣カレシ
Ep:14 好きを強要する男(18/18)
「あのさ、あたしにはあんたにフラれた記憶なんて頭の片隅にもないんだけど?」
事実、フラレていないんだから、そんな記憶あるはずもなく。
あの時、隣にいたこの女の記憶にさえ、きっとないはずだ。
「あの時、俺から別れを切り出しただろ?」
確かに別れ話を切り出してきたのは、大翔の方だった。
だけど、あたしは泣いてすがったわけでもなく『あっ、そう』って、すんなり別れを受け入れたのに。
そう。
モテキ自慢の為に引き止められて。
散々な目にあった。
「その大翔からの別れ話にあたしは『ちょうど良かった』って言ったよね?」
「……」
「あたしがフラれたって言うなら、同じ状況の大翔もあたしにフラれたってことか……」
「それは違うだろ!」
「違わないわよ。本当、いい加減にしてくれない? あんまりしつこいとこっちにも考えがあるから!」
なんて勢いよく言ってはみたものの、とくに考えがあるわけでもなく。
まあ、つまりは言ってみただけ。
普通に話してもこの男の話は終わらないって思ったから、変化球を投げてみたんだけど。
「考えってなんだよ!」
それは意味なく、大翔に打ち返された。
考えがなかっただけに、そこを突っ込まれるのは非常にマズイ。
こうなったら、もう無理やり話を切り上げて真希と逃げよう。
そんなことを考えていると、
「……大翔くん、もうやめて!」
そう言ってきたのは、今まで大翔の隣で黙って様子を見ていた女だった。
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