泣けない子供たち2
℃脅迫。(1/13)




その頃ーーーーーーー。




ーーコウキの所属事務所ーー

社長室ーー。


ノックと共にドアを開ける女性スタッフ。

「逢坂社長、お電話が入っております」
「ん?だぁれ?」

逢坂はチェックしていた書類から視線を上げた。

「それが……重大な秘密を知っている、と……」
「……物騒だね」

しかし、こういった仕事をしているとそれなりにこう言った電話は掛かってくるもので。
その内容は大抵所属モデルの恋愛や未成年の飲酒喫煙といったもので、しかもそのモデルの人気を思うとーーモデルには申し訳ないがーー…週刊誌が買い取るはずもなく。
今まで大きなトラブルに発展したことはなかった。


「まぁいいや、電話回して」
わかりました、と言って出ていく女性。

逢坂はデスクの上のランプが光るのを待ち構えた。


ピカッと光ったのを見て受話器を取りボタンを押す。



「お待たせしました。社長の逢坂でございます」
『ふふ、こんにちは』

女の声。
若くはない。

「……どういったご用件でしょうか」
今までの電話は在籍モデルの高校の同級生も多かったがそういうわけではなさそうだ。

『そちらの、コウキ、について……ね?』
わざとらしく“コウキ”と強調する声は決して上品ではなく。
逢坂は瞬時に金だな、と当たりをつけた。


「うちのコウキが、何か?」
『女と暮らしているでしょう』
“女”の言い方からしてそれが“女性”を指しているのではなく“彼女”を指しているのは明白だった。

「そういう事実はございませんが」
『あら……カミヤヨウコ……』

逢坂は驚き、目を見開いた。

「失礼ですがあなたは……」
『コウキの母です』

こういった問い合わせや苦情、脅迫は相手のペースにしてはならないーーわかっているのに。
驚きのあまり、逢坂は何も言えなくなった。


コウキの母親。
ーーーどうしてコウキの母親がこんな電話を……?



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