泣けない子供たち2
℃仕事。(1/28)


コウキside

「授業始めっぞー」
やはり榊先生の授業に号令はない。

「あぁ、そうだ今朝言い忘れたけど今日から二者面談だからなー出席番号順」

進路、いい加減決めなきゃなぁ。
志望校や志望学部まで聞かれんのかな……。
というか、それを聞かれるんだろうな。
この学校で就職する人はほとんどいないだろうし。
ましてやその中での特進クラス。
全員有名大学だろう。

「教室でやるから放課後忘れずに残ってろよー」
「あー!ごめん榊!俺今日バイトだわ!無理!」
声を出したのは出席番号1番の奴。

「おいおい、こないだ言ったろー。で、榊先生、な!」
「忘れてたんだって!俺飛ばしてよ」

「じゃあ今日は2番から6番な」
「え、ちょ、無理!今日デートだし!」
「俺バイト!」
「私も!」

「お前らなぁ……じゃあ今日空いてる奴誰だよ!」
このいい加減な感じも好きだったなぁ……。
……いや、いい加減なのは生徒の方か。

「あ、俺大丈夫ー」
「私もー」

結局、その日空いてる人が面談することになって。
多分俺も今週中になるだろう。

「よし、じゃあ授業始めるぞ。前回の続き、ーー……」







放課後。
急がなければ稲森さんが迎えに来てしまう。

「……あ、」
教室を出ようとしたところで思い出した。


「木下くん」
「ん?」
「これ、ありがとう」
渡したのは例のDVD。

「おお!別にゆっくりでよかったのに」
「オフだったから」
「そっか。どうだった?」
「面白かったよ、ありがとう」

木下くんは一瞬止まったけれど、すぐに「そっか」と言って鞄にしまった。

どうしたのか少し気になったけど、時間がないのでまた今度聞くことにして教室を出た。
今日は初めての雑誌。
女の子向けの雑誌の特集ページ。
インタビューもあるらしい。
知らないスタッフとの撮影は少し緊張する。
カメラマン、池内さんだったらいいのに。

俺は足早に校門に向かった。






〜〜〜〜〜〜〜

「木下!松下なんだって?」
「面白かった、って微笑まれた……」
「……面白かったっけ、これ」
「お前、母ちゃんへのフェイクで中身入れ換えたままだったんじゃねーの?」
「ばか、いつの時代だよそれ。しかもそれジャケットがこれじゃ意味ねーだろ」
「……謎だな」
「あぁ……」




173前n[*][#]次n

/283 n


⇒作品?レビュー
⇒モバスペ?Book?

[編集]

back