浮気するのは君のせい

sin.03 皆無(1/19)








「……ふふ、来たんだ」



待ってるよ、と言ったのは琉衣のくせに、放課後屋上に訪れた私を見て彼は少し怪しげに微笑んだ。

まるで、来ない方が良かったのに、とでも言いたげな顔だ。




「だって、琉衣が、待ってるよって言ったから」

「うん、そうだねえ」

「来なかったら怒ってたでしょう?」

「それも、そうかも」



でも、と続けた琉衣は、やっぱり怪しげな顔をして、ドアの前から動けない私に一歩二歩と近づいてきた。

季節は10月の終わり。

空気が冷たいからなのか、はたまた琉衣の雰囲気が冷たいからなのか、ぶるっと鳥肌がたつ。



「る、琉衣」

「震えてる」

「っ」

「俺が、怖い?」



すっと伸びた手の後ろで、何かががちゃりと音をたてた。

琉衣が鍵を閉めたと気がつくのにそんなに時間はかからなかったと思う。



「こ、わくなんか」

「ねえ、未央、未央は誰のもの?」

「……え?」

「まぁ、俺のものでも、ないけどさ」



さっきから、何が言いたいんだろう。

下手なことを言ったら怒らせてしまいそうで、口をつぐむ。




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