浮気するのは君のせい

sin.02 侵食(1/11)








そもそも。

私が琉衣を好きになったきっかけなんて、ちっぽけなものだった。

見た目が好みだったとか、雰囲気が好みだったとか、本当に上辺だけのものでしかなかった。


それがいつから、こんなに愛しく感じるようになってしまったのかは、自分でもよくわからない。

ただ、だんだんと。純粋な好きの気持ちが、何か他の別のようなものに変わってきてしまっているのは、わかっていた。


けれど、どうしようもなくて。

好きだ、好きだ、好きだ、そうおもえば思うほど、琉衣に溺れていく自分がいた。



「未央、こっちにおいで」



琉衣にそう言われると、まるで魔法にかけられたみたいに身体がふわふわとしてくる。

家に着いた瞬間、怪しい笑みを浮かべながら、琉衣が私を呼び寄せた。



「琉衣」

「あ、未央に名前呼ばれるの、結構好きかも」



琉衣の口から、好きという言葉が出ただけで、心臓がドクドクと音をたて始める。

勘違いしちゃいけない、と必死で自分に言い聞かせた。



「本当?」

「うん。すごくいい」

「ふふ、そっか。……琉衣」



ぎゅっと抱きつく。

琉衣は私を抱きしめ返すことはせず、代わりにぽんぽんと頭を撫でてくれた。




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