浮気するのは君のせい
sin.01 浮気(1/9)
「俺が浮気するのは、未央のせいだからね」
彼氏の口癖だ。
いや、もはや彼氏とも言い難いんだけれど。
“一応彼氏”の部屋の中から、女のいやらしい声が聞こえて、インターホンに伸ばした手を引っ込めた。
外まで聞こえてますよー。あらあら昼間からお盛んですねぇー。なんて嫌味を心の中で唱えながら、私はため息をついた。
もう慣れた。
浮気をされるのも、その場面に遭遇するのも、ぜんぶ。
言ったってどうにかなる問題じゃないこともわかってる。だから何も言わない。
――私は今日も、浮気を黙認する。
告白したのは私からだった。
彼の名を望月琉衣(もちづきるい)と言って、学年でも有名な人で。
その理由は、彼が学年一のプレイボーイであること、つまり女にだらしがないからだ。
来るもの拒まず去るもの追わず、とはまさに彼を現した表現だと思う。
正直、琉衣は特別かっこいいわけではない。どちらかと言えばかっこいいくらい。
それなのに、学年で一番モテた。その理由は誰にもわからないけど。
でも、彼には人を惹きつける何かが確かにあって、それにやられたのは私も同じ。
最初は見ているだけでよかった。見ているだけでよかったはずだったのに、欲が出た。
傍にいたいと思ってしまった。
だから、ダメ元で思いを伝えた時、まさかいい返事がもらえるとは思ってもいなくて。
『……名前は?』
『す、鈴原未央(すずはらみお)です』
『ふぅん。未央、これからよろしく』
私と琉衣の、始まりだった。
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