地味子ロック
始動(1/14)
カエデ君にはそのまま紙袋を持ってもらって、
2人で改札を出た。
「一人で持てるから!大丈夫!」
「いや流石に目の前に荷物大量に持ってる女子がいたら助けるだろ、人間として」
「いや...でも大丈夫だから!」
荷物を持ってもらうことが嫌なのではなくて、
これ以上今の私......イメチェン前の私を見られるのがすごく恥ずかしい。
一刻も早くカエデ君から離れたい。
「なんかお前、元気になった?」
「へ?」
「いやなんか、もっとウジウジしてるイメージだったから」
ウジウジしてるイメージ、という言葉に少しグサッと来たけど、
元気になった、って、言葉は何だか嬉しかった。
...と、喜んでいる場合ではなくて、
私はこの今の姿をこれ以上見せたくないんだ。
「げっ、元気になったから大丈夫なの!」
奪うように紙袋を取り戻して。
「じゃ、じゃあまた!曲決めで!」
「は?あ、ああ...」
何だこいつ、というカエデ君の顔は無視して、
走って逃げた。
………のだけど、
起こしてもらったお礼を言ってないことに気づいて、
走って戻って、
自転車置き場で自転車を出しているカエデ君のところに行って、
「カエデ君、ありがとう、
起こしてくれて」
紙袋が多すぎてお辞儀はできなかったけどお礼を言った。
「……お前そんなことのために戻ってきたわけ?」
「う、うん」
「お前結構変なやつだよな」
「へ!?」
カエデ君がニヤリと笑った。
「へ、変じゃないよ!
…じゃあ、また後でね」
「おー」
カエデ君が手を挙げた。
私はまた同じ道を歩いて帰る。
ぼんやりと、カエデ君の顔を思い出す。
私、カエデ君の笑った顔、初めて見た。
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