会社は楽しい

A002社長の視察(1/1)






中途採用で入社して私は千葉県の工場へ勤務することになりました。

一ヶ月が経とうとする頃、毎月恒例の社長の視察が行われました。

この会社、職安は勧めなかったけど、一応一部上場の会社でアルミサッシを扱っていまして、日本各地に工場を持っています。

私が配属された工場は、その中で一番最初の工場ということで、社長の愛着がとっても深かく、他の工場へは、社長自ら出向かれるのは、数年に一回ぐらいだと聞いています。

その社長の視察の日、私はいつものように機械の電気系の組み立てをしていました。

するとそこへ上司がやって来て、社長がみえられるから正門に整列するぞ、と言ってきました。普段はあんなに生産性生産性と言っているくせに、社員全員整列して時間を潰すなんて、バカらしいと思って、私は一人現場に残って電気の組み立てを続けました。

社長の車が到着したらしく、元気な小学生のような掛け声が聞こえてきました。さすが職安でも勧めない会社だと思いながら作業をしていると、何やら背後に人の気配が…

「君は何をしているのかね」

社長本人だった。

5mほど離れた後ろの方に工場長ほか・課長・班長と、社員が横一列に整列している。そして社長と私に注目している。

「納期が間に合わないから組み立てをしてます。」
と、私はそのまま伝えた。社長は「う〜ん、そうか」と言ってながめていましたが、暫くすると、多くの取り巻きを引き連れて去って行きました。

私の行動に青くなる者、面白がる者、後は知らんぞと言う者、反応は様々。

それから一ヶ月後、再び社長の視察の日がやってきました。

朝礼で工場長から本日の注意事項が話された。

「えー、本日は社長視察の日てすが、当月から正門に整列してのお出迎えは無くなりました。社長より時間の無駄だと指摘がありまして、従業員の皆さんは普段通り仕事をしていてください。」

まじですか?

なんと話の分かる社長や!
いや、話さんでも分かったってことですか?

少し見直したぜ社長。

会社って面白い!




- 2 -
前n[*][#]次n
bookmark
/6 n


⇒作品レビュー
⇒モバスペBook

[edit]

[←戻る]