人身売屋〜みうりや〜
[道のり〜宇鬼ノ編〜](1/9)
………宇鬼視点………
大変なことになっちまった。
夜早の野郎は見つからねえし、櫂さんはよく分からないが病気っぽいし…。
この数日間で、空は精神的にだいぶキているらしいことは俺でさえ気付いていた。
人身売屋としては、向かないのではないかと思ってしまう程、彼女は優し過ぎるからな…。
小屋を出てから、ある場所を目指してただひたすら走り続けている間、そんなことをずっと考えていた。
夜が明け始めた頃。
一旦寺に寄り、仲間達に一通り事態の説明と今後の指示をした後、空達に同行してもらうべく、飛山(ひやま)と義太(よした)の二人を碧衣の小屋に向かわせた。
この二人は任務遂行を第一とする、失敗を許さない真面目な奴等で、子弟の中で最も安心して仕事を任せられる。
少々愛想がないが、まあそれは空も同じようなもんだろうから心配はしない。
二人が寺を出たのを見届け、俺もすぐに発った。
――目指すは、耳寄屋。
かぶのじいさん(可文太)とは昔から親しく、よく仕事に力を貸してくれた。
手掛かりも何もない今、頼れるのはもう…ここしかないと思った。
そらがすっかり明るくなって、森を抜けた空き地。
一軒の小屋と、小さな庭で作業をする人物を見つける。
「かぶのじいさん」
近づいて声をかけると、しゃがんで植物に水をあげていた手を止め、こちらを仰ぎ見た。
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