人身売屋〜みうりや〜
[赤い鶴の報せ](1/17)
手首の朱布にそっと触れる。

また人が売られる。
あたし達人身売屋が存在するから。


残暑の暑さが続く今日このごろ、町の様子は少し前に比べ穏やかではなくなった。

近いうちに戦が始まるのだ。

以前嫌な意味でお世話になったあの殿様が起こすらしい。

仕事が終わり、あたしは楓のめし屋を訪れ、その噂を聞いた。

「本当にいつになったら誰も傷付かない世の中になるのかしらね」

楓があたしのお茶を注いでくれながら呟く。

あたしは何も答えなかった。





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