人身売屋〜みうりや〜
[宇鬼の純情](1/15)
碧衣が夜早の治療をして早三日。
まだ完全にとは行かないが、夜早の目は無事に回復した。
日常生活に支障を来たすことなく前のように生活出来ているほどに。

そして陽がすっかり昇った頃、夜早はあたしを町に連れて行くと言い出した。
以前世話になったあのめし屋の女の人に挨拶もかねて、そしてあたしへのお礼に昼膳をご馳走してくれるらしい。

「夜早、本当にいいのか?」
「だから良いんだって!世話になったお礼なんだから」
「・・・でも」
「握り飯旨かったって店の人にも言いたいし、ただのついで何だから遠慮するなよ」

そう言っているうちに、この前のめし屋に到着した。
すると店の前で、客の呼び込みをしていたあの時の女の人と目が合った。

「あら!お客さんこの間の・・・!」

あたしを見つけた女の人は駆け寄ってくると、あたしの両手をがしっと掴んだ。

「元気だったかい?あれから店に来ないんで心配してたんだよ〜!」
「・・・ありがとう」
「あら。この方はどちらさん?」

あたしの隣に立っていた夜早に目をやると、軽い会釈をする。

「はじめまして、夜早といいます。この前はこいつが世話になりました。」
「そんな世話だなんてとんでもない!こっちだって不快な思いさせちまっただろうし。あ、あたしは楓!昼は何かここで食べていくかい?特別待遇させてもらうよ!」
「本当ですか楓さん」

すると楓は、あたしの耳元に顔を近づけて。

「・・・まさかあんたにこんな素敵な好い人がいたなんて知らなかったよ。後でちゃんと紹介しなよ?」
「えっ・・・」
「とぼけないとぼけない♪格好いい男じゃないか。そっか!この間の握り飯は彼の分だったんだね?」
「えっと・・・そうだけど・・・いや、そうじゃなくて」
「さあ、上がった上がった!腕によりを掛けさせてもらうよ♪」

・・・楓さんはあたしの話を聞かずに、元気よく夜早とあたしの手を引いて店内へ案内した。





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