人身売屋〜みうりや〜
[男の勝負](1/13)
冷たく薄暗い牢獄の中。
薄々こうなるんじゃないか、と思わなかったこともなかったが。
実際になってみると事態は深刻で。
何故牢獄にあたしがいるのか。
簡単だ。
今朝早くに美桜都を連れて町へ下りてきた途端、旗本の家臣達に誘拐犯に仕立て上げられたのだ。
後ろ手に縛られた縄が食い込んで物凄く痛い…。
「誘拐犯よ」
監視役であろう男が、冷たい床にうつ伏せになっているあたしの顎を持つとぐいっと上を向かせる。
「人身売の次は人攫いか。犯罪者は犯罪の種類を選ばないのだなあ」
「…離せ」
にやりとする家臣。
以前の下卑た家臣といい、ここにはまともな家臣はいないのか…。
「…まこと美しいのう…」
「っ」
鼻先が当たるのではという程に顔を近づけられる。
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