私にだけ甘い王子様
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この日1限は語学で、運悪くなずちゃんとクラスが離れてしまったけど、初回からのグループワークでなんとか友達ができ、2限もぼっちだったにもかかわらずるんるん気分だった。
でも、その気分は一気に崩れ落ちた。
「…な、なんで…」
「俺も取ってるから、1人で」
と言って王子様は私の隣に座った。咄嗟に私はひとつずれて座り直した。
「なんで逃げんの」
そして、私が元座っていた場所に移動する。1列につき3席しかない。追い詰められた。
「一緒に受けよ、萌黄」
目を三日月みたいな形に細めて、王子様は微かに笑った。怖い。もう私が拒否したって意味がないくせに。
ふと周りを見ると、女の子たちがじろじろとこっちを見ている。これも怖い。
チャイムが鳴り、教授が話をし始めた。
「萌黄って男苦手なんだってね」
「…はい」
知ってるならどこかにいってほしい。王子様がいる方の左手首をぎゅっと反対の手で握った。
この授業は一般教養なので教室には人がたくさんいて、小さな声で喋るくらいなら目立たなかった。
「俺も苦手なんでしょ」
頬杖をつきながら覗き込むように王子様は私を見る。思わず下を向いた。
だから分かってるなら離れてほしい。汗がじわじわにじんできた。
「まあ、俺を好きになれば問題ないよね」
とんでもない一言に、私は王子様を見てしまった。
「ね、萌黄」
真っ黒な瞳、に捉えられた気分だ。逃げられない。
怖さが一周して、汗がサーっと引いた。
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