××なあたしと、黒いオオカミ



桴於の人(1/15)






気持ちいいくらいに晴れた日曜日


にぎわう駅のホームの隅でボーッと改札を通り抜ける人の流れを眺めていた。





――――別に、お礼なんていいよ



土曜日の夜

無意識のうちに坂田くんに電話をかけてしまったらしい。


何ていったらいいかわからなくて

咄嗟にお礼がしたい。と言ってしまった。

そしたら案の定、いらないという答えが返ってきた。




「でも…………」


慌てていったことだけど、本当にお礼をしたいとは思っていた。


けど、よく考えたら坂田くんのこと………そんなに知らないし


第一あたしにできるようなことがあるのだろうか………



「…………じゃあさ、」



「?」



「体で払ってよ」



電話の向こうから聞こえたその言葉に、緊張が走る



「な………」



「明日、10時に駅で」



その声と共に切れた電話

ツーツーという無機質な音が流れる


な………どういうこと?

















「10時………」


腕時計の針が指す数字を見て、思わずため息をついてしまう。



まさか………いやそれは…………




「理子」


顔を上げると坂田くんがそこにはいて

私服のせいか、少し違う雰囲気が漂っている。




「どこに…いくの?」



不安そうなあたしを見て、ああ、と声を出した



「これ」

彼の手には紙が2つ



「星の………美術館?」



「そ」


なんだ………


ホッと胸を撫で下ろしているとそんなあたしを見て意地悪そうに笑った。



「食われると思った?」



「!」



「安心して、それはないから。その代わり………今日一日理子は俺のだから」


ニッと笑ながらそう言う彼

その言葉が不思議と嫌じゃなくて素直に頷いた。











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ちょっと休憩***

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