eros.03 ヒーローとヒロイン（1/17）
＊
「まじであんた死んでくれない」
15年間生きてきて、ここまで敵意を剥き出しにされたのは初めてだ。
中学の時、私の高橋くん取らないでよ！とかなんとか言って泣きついてきた同級生が可愛く思える。
「……教科書返してもらえませんか」
「ああ？」
伊藤さんに連れてこられたのは人気(ひとけ)のない体育館裏だった。
昼休み、一人で図書室で本を読んでいたら、油断した。
「ないと、困りますし」
「なめてんの？」
「返して下さい」
「返すから、関わるなよ」
「なっ」
伊藤さんの目が本気だ。
胸ぐらを掴まれて、ぐいっと引き寄せられる。
「朝日に関わらないで」
……ああ。
伊藤さんは、瀬戸朝日のことがそこまで好きなんだ。
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