僕らはカケラでできている




[練って溶かして飲みこんで](1/1)
社内恋愛/つまみ食い/甘いあの人





練って溶かして飲みこんで
社内恋愛/つまみ食い/甘いあの人





キャラメルが好きだ。

銀色の紙に包まれた、あのキャラメル。

ちょっと固くて、口のなかで柔らかくなって、ほどけるように甘い。

直方体の狭いキャラメル箱のなかに、四角の集まりが整列されてる、あれ。

斜めにした箱からするっと滑り降りてくる感じも、さらりと冷たいアルミ色の正しい垂直な角が、チクンと手のひらに刺さるのも、悪くない。

本当は刺さりたくはないんだけど、あのキャラメルならいい。まあ、いい。

いいことにしよう。



あの角ばったフォルム。形を整えられる前はドロリとした熱々の液体だったなんて誰が想像できただろう。

まるであの日『使用中』の会議室から出てきたあとの、あの人みたいだ。

きっちり服を着込んでパソコンに向かっていたけれど、ほんの数分前まで、誰かの熱に浮かされて泥々の甘々だったのを僕は知っている。



キャラメルの味。

知ってしまったのは、偶然。

あんまりに美味しそうだったから、一粒、箱から内緒でもらっちゃった。

そしたら思ったよりもハマっちゃって。

結局一箱お買い上げ。



口の中で舐め溶かしたら、柔らかく形態変化。

誰も見てないとこで形態変化。

食べた人しか知らない。

人工物的なあの甘ったるい香りも、ぐにゃんぐにゃんに変わる形も。

まとわりつくような感触も、煮詰めたお砂糖とミルクの風味がたっぷり溶け込んだ、舌に溜まるだ液の甘さも。

今は、僕だけのもの。

そんなキャラメル。



最高かな。

そんなことを思いながら。

今日もひとくち。

あと何粒残ってるだろ。

そんなことを考えながら。

口の中で。







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